医師会文書のデジタル化と情報公開


山形県鶴岡地区医師会 医療情報システム委員:中村秀幸

同委員長:三原一郎 委員:斎藤寿一、土田兼史

1.はじめに

1997年
コンピュータを使わない、使えない会員がまだ半数存在する。また、パソコンを使えても積極的にネットワークに参加しようとする姿勢に乏しい。
1997.5
イントラネット開始多くの会員がトラブルに対応できないため、医師会事務員にかかる負担が大きい。
1997.9
「在宅患者情報共有サービス」稼動開始
1998.11
医療相談「メディカルパーク」運用開始
1999.4
新健診 ・ 検査システム導入
1999.5
「臨床検査オンライン参照システム」稼動
1999.11
毎日メール運動の開始
2000.3
医療機関の機能情報開示
2000.5
オンライン会報配布開始
2001.3
先進的IT活用による医療を中心としたネットワーク事業に採択
2001.8
理事会資料のペーパーレス化
2001.10
詳細な理事会議事録をHPで公開

 なお、ネットの参加数は80医療機関程である(総医療機関数100)。

 最近では、メーリングリストを利用した会報のオンライン配信、理事会資料のデジタル化とペーパーレス理事会の運用、さらには、より詳しい理事会議事録をイントラネットのホームページで公開した。今回はこれら医師会のデジタル化について報告する。

2.オンライン会報

従来、月2回、通達文書、各種案内、行事、予報、事業日程表などを紙会報として各会員に配布していた。これら書類をPDF化しイントラネットのメーリングリストを利用して添付ファイルとして配信することにした。また、会報はホームページにも掲載し、過去の分も含めていつでも参照可能とした。現在60医療機関に会報がメールで配信されている。

(図1:メールでの表示)

3.理事会資料のデジタル化

 理事会資料は100ページほどにもおよぶ分厚いもので、これを出席者分コピーし整理、配分、さらには配送するためには相当の労力を必要としていた。これら紙資料をスキャナーで画像データとして取り込みPDF化してデジタル化を実現した。資料は前もって役員に読んでおいてもらう必要があるが、これはホームページにアップロードすることで対応した。しかし、PDFのままでは読み込みに時間がかかり実用的でないため画像データをHTML化して公開している。(図2)

理事会では、医師会のノートパソコンを流用し、さらにノートパソコン保有者はそれを会議に持参してもらうことで、役員一人に一台のノートパソコンを準備できた。理事会当日は、ノートパソコンのハードディスクにPDF化した理事会資料をコピーし閲覧している。

(図3:資料を参照しているところ)

4.ぺ?パーレス理事会の運用

 最も懸念されたのは、パソコンを操作しながらの会議運用に対し役員から不満がでないか、画像ファイルとして読み込んだ資料が読みにくくはないかという問題であった。このこともあり、約半年は従来の紙資料とデジタル資料とを併用する試験期間をおいた。ある程度目処がついた本年8月より紙資料は原則廃止とし、本格的なペーパーレス理事会を開始した。当初心配された混乱や不満もほとんど聞かれることなく、理事会はスムースに運用されている。

(図4:理事会風景)

5.理事会議事録の公開

 理事会資料は理事会終了後一般会員へも原則公開することにした。これに引き続き、より詳細な議事録もホームページに公開することにした。従来理事会の議事録は、医師会広報誌に掲載されてはいたものの、議題程度のものであり、詳しい質疑までは公開されていなかった。また、理事会と広報誌掲載までには1ヶ月ものブランクがあり、情報として鮮度の低いものであった。現在は、数ページにおよぶ質疑を含む詳細な議事録が理事会終了後短期間に公開されるようになった。

6.デジタル化の利点

医師会内の文書類をデジタル化することによる利点には下記のようなものがある。

1) 省力化
紙資料をデジタル化するにも少なからず労力は必要であるが、従来のコピー、配分作業に比べ、約半分の労力で済む。
2) 資源の節約
当然のことながら、紙の浪費を抑えることができる。とくに理事会資料はほとんどの人にとって会議でしか参照しないものであり、会議後はごみとなっていることが多かった。
3) 配信可能
会議前の資料配布にネットワークを利用することが可能となった。理事会の4?5日前にはイントラネットのホームページにアップロードするので、それを事前に閲覧することや必要なら印刷することも可能である。また、理事会終了後はすべての会員に公開するので、理事会の情報をより多くの会員で共有できるようになった。
4) 検索、再利用可能
デジタル化したデータはネットワークを利用して容易に検索でき、またそれを再利用できるという利点も見逃せない。例えば、過去に資料としたデータを再利用したい場合、新たにコピーし資料を作る必要はない。また、会員は自由に過去の資料を検索、閲覧することができる。
5) 保存スペースの削減
紙資料の保存スペースの確保は結構頭の痛い問題である。暫くはオリジナルの資料を保存する必要性はあるかもしれないが、デジタル化された資料でこと足りとなれば、保存スペースを削減することが可能となる。

7.問題点

 デジタル化とはいっても文書を画像ファイルにしただけであり、再利用という点では不十分である。さりとて、紙文書をOCRにかけて真のデジタル文書とするには手間がかかり過ぎる。日医や県など中央からの通達文書等はPDFなど標準化したファイル形式としても配布するよう希望したい。

8.まとめ

 従来ペーパーレスというと、資源(紙)の無駄や保存スペースの削減を主たる目的としていた。しかし、ネットワークで結ばれたIT社会においては、さらに情報の公開、共有という組織にとって大きなメリットを生み出す。理事会での情報は役員のみが知っていればよいというものではない。むしろ、すべての会員が理事会の内容を理解し、そこでの問題意識を共有すべきである。それでこそ、医師会としての一体感が深まり、より良い医療に繋がるものと考えられる。医師会文書のデジタル化が、"開かれた医師会"に寄与できことを期待したい。