情報技術と医療 <下>

鶴岡地区医師会の取り組み


  • イントラネット
  • データ共有、チーム医療
  • 初診でもすばやく適切に

 鶴岡地区医師会が、県から委託された「かかりつけ医推進デル事業」の一環として、インターネットのホームページによる普及活動とともに取り組んでいるのが、バソコンネットークを活用した地域別編成によるチーム診療だ。同医師会と医師の間だけを結ぶイントラネットが強い力を発揮している。

 イントラネットに往診患者のデータを入力しておき、かかりつけ医が不在時に患者の容体が急変した場合、同じグループの医師が駆けつげ、そのデータを基に診断する。2?5人の3グループで実施しておリ、最も多い5人の医師によるAグループは127人の患者を抱えている。

 データには住所、氏名、病名、投与薬剤、量近の病状、訪問介護サービスの利用状況まで細かく掲載しているため、初診であってもより早く適切な処膚を取ることができる。患者の家族は「緊急時の連絡方法について」という案内文をたよりに、代わりの医飾に連絡する。同医師会理事でチーム診療に参加している中目千之医師(52)=鶴岡市昭和町=は「必要な一タがすぐに検索できるので初診でも診断がスムースにできる。高齢者を在宅で介護している家族や患者本人の本安解消にも役立っている」と説明する。

 一方、イントラネツトを活用したもう一つのシステムが去年5月から稼働している「臨床検査ータ参照システム」だ。開業医が同医師会検査室に委託した血液検査などの結果がバソコンで検索できる。これまでは同医師会の職員が1日1?2回、各病院を訪ね、検査のサンプルを集めたり結果を届けてきたが、このシステム構築により、医師は24時間いつでも結果を検索し、患者に提供できる。

 検査結果は各医療機関ごとに個人デ一タが蓄積されるため、検査で判明した個人の成分数値を過去の検査と比較して時系列的にグラフ化し、項目ごとに分析することも可能になった。

 中目医師は量近の患者さんの中には、血液検査などの成分数値を記録して健康管理している人もいる。医院ではグラフ化した検査結果を使って患者個人の健康手帳を作ろうかと考えている。近い将来、診察室にバソコンを置く病院が増えるだろう」と指摘。さらに「鶴岡市立荘内病院の医師が、閉業医が実施した検査情報を閲覧できるようになれば一次医療機関と二次医療機関の連携がよリスム‐ズになる。同じ検査を省略できるので非常に効率的」とメリットを強調する。

 懸念されるのは個人情報に対する不正アクセスの予防策だが、イントラネットには専用の電話番号と医師個人のパスードを使わないと入り込めない上、臨床検査データ参照システムでは検査結果を検索するには各医療機関のコードとパスワードが必要。二重三重の口ックを掛けてハッカーの侵入を防いでいる。

 産業界が情報通信サービス分野の新しい環境条件の変化に迅速に反応し、技術開発を繰り返している現代で、地域医療分野も例外ではない。鶴岡地区医師会のパソコンネットワークは、かかりつけ医推進モデル事業が自指す「一次医療と二次医療の機能分担と連携」を飛躍的に進める潜在力となリ、地域住民に新しいサービスを提供し、情報を発信し続けている。

[山形新聞 2000/1/26]